夢で描いていた小説 タイトルなし

 

夢で小説を書いていました。内容を結構ガッツリ覚えているので残します。

 

 

五年連れ添った女性同士のカップル、パートナーのひとりが記憶喪失になった、という話でした。ひとりはプロポーズしようとしていて、段取りが甘々でバレバレ。ひとりはそのプロポーズを待っているという設定で、ふたりは一緒に住んでいだという設定だったとおもう おぼえてるのはこれ⬇️

 

 

「さてと」

 

久しぶりに病院ではない我が家の匂いがする。五年も住んだ。きみと。きみとこの家にいるというのに、わたしの心には永遠にもやがかかっている。入院のため持って行っていた荷物は バッグ一つにおさまった。それを置いて、鼻息を鳴らして意気込むきみが、やけに「らしくて」いやになった。きみはきみなのか。わたしを覚えていないのに?あの甘い日々は?

 

「よろしくね!あらためて!」

言いながら差し出された手に面食らう。握手。

 

君と歩いた桜並木。銀杏臭いよと笑った日も、凍った地面に滑った髪を慌ててぐっととどめた日も、真夏日に暑いね暑いよとうなりながらも、手は離さなかった。

 

手を繋ぐのは当たり前だった。

 

お友達として君の手を握るのは何年ぶりだろう。というか、君の手を、君の意思で、握るのは、いつぶりか。出会った時以来?じっと目を見つめてみる。何か?と言いたげな視線を向けられる。口を開く。わたしは動揺しているんだ。もう恋人ではない君に。

 

「よろしくね。あらためて」

 

うまく笑えていたかはわからない。

 

満足げに笑う君と、あいかわらずの手の暖かさに、ふと涙が出そうになった。視界の端ではゼクシィのCMが流れていた。ああ、この世に神はいないのかもしれない。人生で初めてそう思った。

 

彼女はテレビに一瞬目をやり、「そろそろ私たちもさ、」と言った。つづきは、

 

「言わないで」

 

 

 

 

おわり